1.教育水準と国家試験受験資格

教育水準の観点から言えば、日本国やEUのほとんどの医学部は世界水準に達して、医学部に留学する上で問題がないかと思います。この基準に当たるのが、世界医学教育連盟World Federation for Medical Education(WFME)による医学教育国際基準です。日本及びEU諸国の医大はこの基準に従って教育が行われています。

WFMEの認定を受けた大学は、WHO関連機関であるWDOMS(World Directory of Medical Schools)のデータベースに掲載されています。https://www.wdoms.org/

このリストに載っている大学を卒業すれば、日本をはじめ、イギリス、アメリカ、カナダ、イスラエルなどの医師免許試験の受験資格が得られる可能性があります。

そして各国の医師国家試験に合格すれば、正式に医師としての活動ができます。ただし、日本の国家試験は随時認定するようなので、その大学に卒業生が日本の医者になっているか確認が取れれば安心です。

2.伝統・歴史から見るEUの医大

さらに、歴史のある伝統ある大学の場合は、多くの大学や国との協定があり、卒業と同時にイギリス、イスラエル、ドバイなどの医師免許が国家試験を受けずに得られる可能性があります。

順番大学国名設立
1ボローニャイタリア1088
2オックスフォードイギリス1096
3ケンブリッジイギリス1209
4サラマンカスペイン1218
5パドヴァイタリア1222
6ナポリフェデリコIIイタリア1224
7シエナイタリア1240
8パリ(ソルボンヌ)フランス1257
9コインブラポルトガル1290
10マチェラータイタリア1290
11バリャドリッドスペイン1293
12マドリード
コンプルテンセ
スペイン1293
13ローマ・ラ・
サピエンツァ
イタリア1303
14ペルージャイタリア1308
15フィレンツェイタリア1321
16ピサイタリア1343
17チャールズ(カレル)チェコ1348
18パヴィアイタリア1361
19ジャギエロニアンポーランド1364
20ウィーンオーストリア1365
21ハイデルベルクドイツ1386
*東欧ではチェコのチャールズ大学が一番古く、東欧で一番世界大学ランキングが高い

3.「世界大学ランキング」から見るEUの医大

世界には「世界大学ランキング」があり、ときどきこのランキングが話題になりますし、就職する際にも見られることがあります。そのため、できるだけ、その国の一番「世界大学ランキング」の高い大学に進学するのがいいと思います。            

(1) 一般にいわゆる「西側諸国」の医大のレベルが高く、人気も高く、授業料も高額なところが多く、しかも入学するのが困難です。「世界大学ランキング」で言えば、日本のトップレベルの国立大学レベルです。しかし、西欧のイタリアだけは近年人気です。最大の難関はイタリアの国立大学を受験する場合(私学は不要)、TMATというクイズのような難しいテストに合格する必要があります。このMTATで合否が決まると言われています。ただし、学費がかなり安い代わりに物価が日本よりもすべてが高く、6年間を考えるとかなりの出費を覚悟する必要があります。

(2) いわゆる「東欧諸国」と言われる旧ソ連圏諸国で現在EU諸国のメンバーの国は、国立大学がほとんどですが、2科目から3科目だけの入学試験だけなので。比較的入りやすいと言われています。「世界大学ランキング」で言えば、日本の中堅国立大学から地方国立大学レベルです。日本ではハンガリー国の医大が有名です。理由としては、大学水準は問題なく、物価もロシア・ウクライナ戦争の影響でどのEU諸国の物価も上昇していますが、「東欧諸国」はまだ日本よりもやや低い水準にあると思います。しかし、授業料は年々UPしている傾向にあります。

(3) 世界ランキングは下記の2つが有名です。
THE:  World University Rankings by Subject 2025: Medical and Health | Times Higher Education (THE)
QS :  QS World University Rankings for Medicine 2025 | Top Universities

4.人気の国の変遷

過去15年を振り返ると、海外医大留学の主流はハンガリーの国立医大4校から始まりました。その後、チェコの医大が話題になりましたが、大学1~2年生で約40%が退学するという情報が広まり、次第に人気が低下。

一方で、比較的退学率が低く、学費が非常に安いイタリアの医大が人気を集めるようになりました。イタリアの医大はIMAT(国公立医大英語コースに入学するための共通試験)の難易度が高く、世界大学ランキング上位の歴史ある大学が多いです。しかし、COVID-19やロシア・ウクライナ戦争の影響で物価が上昇し、授業料は安いが生活費を含めるとチェコやハンガリー以上の費用がかかる状況になりつつあります。

また、一部の大学では宗教的な理由により解剖実習や臨床授業に制限があることが判明し、知らずに入学すると「6年間で卒業できない」「日本の医師国家試験を受験できない」といったリスクがあることも明らかになっています。(ただし、EUにはERASMSという短期留学制度があり、この制度を使って、キリスト教カソリックの影響が強いフランスやイタリアからチェコのカロル大学第一学部への留学をして解剖学の単位を取得しているケースが多くあります。特にカロル大学第一学部では検体(人間の遺体)はどこかの大学で検体解剖をされたものではなく、新しい検体を使っていることからERASMSで解剖学の単位取得する大学として、毎年人気があります。)

では、次に人気が高まる国はどこでしょうか? 近年、書類審査のみで理系科目の筆記試験が不要なルーマニアの医大が注目されています。

つまり人気の変遷は、ハンガリー国からチェコ共和国へ、その後イタリア国からルーマニア国に変遷しているように見えます。

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